その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「あのさ、れーこさん」
しばらくジッと私を見つめたあと、広沢くんが躊躇いがちに口を開いた。
きっと、今から重要なことを言われる。たぶん、今度こそ異動の話。
そう思ったから、なにも言わずに広沢くんを見つめ返す。
「今週土曜日の夜、どこか外に食べに行きません?普段よりはちょっとだけ、豪華なやつ」
「え?」
てっきり異動の話かと思ったのに。また、そうではなかった。
どうして、急に外での食事の話なんか……
茫然としていると、広沢くんがクスリと笑いながら私の頭を撫でる。
「店は、俺が予約しときますね。詳細は、予約が取れたら連絡します」
「あぁ、そう……」
ぼんやりとしているあいだに、いつのまにか土曜日の外食の予定が決まってしまっていた。
「あ、れーこさん、お風呂ですよね。引き止めてすみません」
「それは別に……」
「あ、それと。俺、今週忙しくなりそうで、平日はれーこさんに会えないかも」
「そう……」