その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「これ、れーこさんに」
広沢くんがジャケットの内ポケットから取り出したのは、小さなジュエリーケース。
私の前でパカッと開かれたその中で、綺麗なダイヤモンドの粒がついた指輪が、お店の照明を浴びてキラキラと輝いていた。
「こ、れ……」
これからフラれるのだと、十中八九覚悟していたものだから、目の前で輝く指輪の意味を考えようにもうまく思考が追いつかない。
「れーこさん、俺と結婚してくれませんか」
茫然としていると、広沢くんがとても優しい甘美な声で私の心に追い討ちをかけてきた。
ゾクっと、身体中の毛が逆立って、頬に熱が溜まっていく。
完全に言葉を失ってしまった私を、広沢くんは優しい表情で見つめてくれた。
「れーこさんにはキャリアがあるし、職場での立場があるから、一緒についてきてって言っても簡単に応えられないことはわかってます」
広沢くんが話しながら、ジュエリーケースの中の指輪を丁寧に抜き取る。