その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「欲を言うと、本当は俺の異動に合わせて一緒に来てほしいし、毎日一緒にいたいんです。でも、もしれーこさんが今の支社でしばらく仕事を続けることを望むなら、急いで無理強いしません。最悪、週末婚でも我慢します。もちろん、ずっとそのままにはしませんけど」
広沢くんが指輪の外側を摘んで差し出しながら、優しく微笑みかけてくる。
「とりあえず、俺が本社に行ってるあいだに他のやつに取られたら困るんで。これは、受け取ってもらえますか」
それに応える方法はひとつだけ。心は決まっているのに、驚きすぎて、私の頭のキャパは完全にオーバーしてしまっていて。
ただ、唖然と広沢くんの顔を見つめるばかりで、ピクリとも身体が動かなかった。
「れーこさん、いや?それとも、俺の好みで決めちゃったやつだから、気に入らない?」
私があまりに反応を示さないせいか、広沢くんの顔がだんだんと不安そうになっていく。
その顔を見つめ返しながら、ようやく私は小さく首を横に振った。