その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
嬉しくて涙が出たのなんて、いつぶりだろう。
もしかしたら、生まれて初めてかもしれない。
指先で目元に残った涙を拭いながら不器用に笑うと、広沢くんが指輪の光る私の左手を愛おしそうにギュッと握った。
「れーこさんのこと、嬉しくて泣かせられるなんて最高です」
「またそんなこと……」
悪戯っぽく揶揄う声も、優しく私を見つめる目も、握りしめられた手の温度も。広沢くんを象る全てが、どうしようもなく愛おしかった。