その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「れーこさん、なんか今日は素直ですね」
広沢くんがクスクス笑いながら、私の髪をクシャリと撫でる。
その大きな手のひらの熱が心地良くてふと目を閉じたら、広沢くんに唇を塞がれた。
ゆっくりと唇を割って入って咥内をかき乱す熱に、ここがまだレストランの駐車場であることを忘れて広沢くんのシャツにしがみつく。
それに気付いた広沢くんが、私の手を上から手のひらでぎゅっと包んで、キスを止めた。
「そろそろ帰ります?」
広沢くんが私から離れて運転席にきちんと座り直す。
彼はすぐ目の前にいて、どこかへ行ったりはしないのに、優しくささやかれた声になぜか少しだけ淋しくなる。
「もういっかい……」
気付けば、無意識につぶやいて、私のほうが助手席から身を乗り出していた。
運転席に座る広沢くんの首の後ろに腕を絡めて、私から彼の唇を塞ぐ。
私のほうから何度目か唇を重ね合わせたとき、されるがままになってくれていた広沢くんがついに私の両肩を押して突き放してきた。