その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「れーこさん。これ、もうムリ。ここ、車内だし。まだレストランの駐車場出てないし」
広沢くんの言葉に、一気に理性が戻ってくる。
「ご、ごめんなさい……」
慌てて広沢くんから飛び退くと、きっちりシートベルトを締めて両手で顔を覆う。
暗がりでも真っ赤なのがバレそうなくらいに、ものすごく恥ずかしかった。
「れーこさん」
「か、帰りましょう。早く車出して」
顔を覆ったままそう言うと、広沢くんがエンジンをかけながらクスクス笑う。
「れーこさん、顔隠さないでよ」
「それはムリ」
「どうして?」
「ムリだから」
自分でも理解不能な衝動を爆発させてしまった私の心臓は、狂ったみたいにバクバク音をたてていた。
「早く、車出して」
広沢くんには早く運転に集中して、さっきの醜態は忘れてもらいたい。
顔を覆いながら必死に訴えていると、横からばっと手をつかまれた。