その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―



「こんにちは。広沢さん、おひさしぶりです」

リビングのほうから、義弟の誠司くんがそろそろ6ヶ月になるしょーくんを抱いて出てくる。


「こんにちは。おひさしぶりです」

広沢くんが誠司くんに挨拶していると、奥から妹の美耶子が父と一緒に連れ立って出てきた。


「お父さん、美耶子、今日は時間もらってありがとう。え、っと……こちらが、会社の後輩でお付き合いしている広沢 律さん、です」

広沢くんのことをそんなふうに改まって誰かに紹介するのは初めてだから、父と妹相手にひどく緊張した。


「はじめまして。広沢です」

「はじめまして。礼子の父です。今日はこちらまで足を運んでもらってありがとうございます」

広沢くんの礼儀正しい仕草も、人当たりのよい笑顔もおそらく父には好印象に映っているのだろう。

父の広沢くんに対する反応は、好感触だった。


けれど──……


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