その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―


美耶子はしょーくんを妊娠中に切迫早産気味で入院をしていて。乃々香と誠司くんが広沢くんと顔見知りになったのは、ちょうど美耶子が家を不在にしている時期だった。

乃々香は広沢くんに遊んでもらったり、運動を教えてもらったことがあって。それがきっかけで、彼のことを気に入って懐いている。


「心配しなくて大丈夫だよ。広沢くん、かっこいいから」

大きな瞳を見開いて大人たちのこそこそ話を聞いていた乃々香が、広沢くんを見上げてにっこりとする。


「行こう、広沢くん。美味しいケーキ買ってるんだよ」

「あ、乃々香ちゃん……」

乃々香は広沢くんの腕を両手でつかむと、甘えてぶら下がるようにしながら、彼をリビングのほうへと導いていった。

数回しか会っていないのに、なぜか乃々香はものすごく広沢くんに懐いている。

広沢くんを見上げて話しかけている乃々香は、ずっと満面の笑みを浮かべていて、まるで乃々香の彼氏が家に遊びに来てるみたいなはしゃぎ具合だ。


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