その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「すみません、お義姉さん。乃々香、なんだかものすごく広沢さんのこと気に入ってて……」
しょーくんに髪の毛を引っ張られている誠司くんが、申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「大丈夫。乃々香に歓迎されてるなら、嬉しいから」
私は苦笑すると、こっちに関心を示すように小さな手を伸ばしてきたしょーくんに指を差し出した。
満足げにニコッと笑ったしょーくんが、私の指をギュッと握ってくれる。その柔らかな感触に癒されて、少し和んだ。
広沢くんはプロポーズしてくれたあと、なるべくすぐに私の実家に挨拶に行きたいと言ってくれた。
そのことを電話で父と美耶子に話すと、ふたりともすごく喜んでくれた。
妹より婚期が遅いことを内心心配していたであろう父のほうは、手放しで喜んでくれたのだけど。
広沢くんが8つ下であることや、数ヶ月後に先に転勤を伴う異動でしばらく遠距離になることを話したら、妹の美耶子のほうが徐々に難色を示し始めた。