その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
上司と部下の、その先の未来
終業時刻を少し過ぎたオフィス内は、まだザワザワとしていて落ち着かない。
デスクの中身を空っぽにし、私物を詰めた小さな段ボール箱にガムテープで蓋をする。
やり残しがないかどうか頭の中で全てチェックして、ノートパソコンの電源を落としたとき、企画部長がゆっくりと歩み寄ってきた。
「どうだ?片付きそうか?」
企画部長に声をかけられて、反射的に背筋がピンと伸びる。
「はい。あとは荷物を総務に頼んで送ってもらうだけです」
「お疲れ様。碓氷、勤続何年だったんだ?」
「新人の頃からここなので……もう10年は……」
「そうか。碓氷は俺が定年になるまでいるかと思ってたけどな」
一応は笑っている企画部長の言葉が、冗談なのか本気なのかよくわからない。
困った挙句、とりあえず苦笑いに近い愛想笑いを返しながら、ふと、まだ空いたままになっている広沢くんのデスクに視線を向けた。