その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「楽しみにしてたし、すごく嬉しいと思ってる。迎えに来てくれたこと。私も、早く会いたかったから」
一瞬ぽかんとした表情を浮かべた広沢くんが、すぐに笑顔になって、私をまたぎゅーっと抱きしめてくる。
「れーこさん、可愛い」
「やめてよ、外なんだから……」
自分で言った言葉に今さら恥ずかしくなる。
「れーこさん」
閉じ込められた腕から逃れようと抵抗する私の耳元で、広沢くんが甘く優しく呼びかけてくる。
私の全部を丸ごと包み込むような温かさに、私は抵抗を辞めて素直に身を委ねることにした。
私の肩に顔を埋めた広沢くんが、愛おしげにささやく。
「れーこさん、おかえり」
「ただいま、律」
《Fin》