その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「で、どうしたんですか?碓氷さん」
人の心を掻き乱しておいて、すぐに仕事モードになる広沢くんにちょっと腹を立てながら、今度こそ彼と向き合うように椅子に座る。
それから、最近、指導がうまくいかずに秦野さんと新城さんの雰囲気が悪くなっていることを広沢くんに話した。
「秦野さんから新城さんのことで何か相談受けたりしてた?」
「いえ、特には。なんとなく、桐谷に比べたら大変なのかなーとは感じてたけど」
「そっか」
秦野さんはこれまで、何かトラブルがあったら広沢くんに頼ることも多かったから、彼に何か話しているかもと思ったけれど。
予想外にも、ひとりで頑張っているらしい。
「とりあえず、今日は新城さんのことを研修中ってことで取引先に連れてったらいいんですよね?」
「広沢くんがよければ。今日行くところ、広沢くんとの関係もいいところでしょ?」
「よく知ってますね」
何気なくそう言ったら、広沢くんがニヤリと笑ったから気まずくなった。