その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「ちゃんと、俺のこと気にかけてくれてて嬉しいです」
「勘違いしないで。上司としてだから」
「わかってます」
ついムキになって答えた私を見て、広沢くんがまだニヤニヤしているから腹立たしい。
「じゃぁ、そういうことで。話はおしまい」
「あ、そういえば。俺が新城さんと出てる間、桐谷はどうするんですか?」
立ち上がろうとする私に、広沢くんが思い出したように訊ねてくる。
「他の誰かのサポートをお願いするか、私の業務の手伝いでもしてもらおうかと思ってる」
「ふーん」
抑揚のない声でそう答えて立ち上がった広沢くんが、何か言いたげに私を見てくる。
「何?」
「別に」
あまり優しくない声でそう言って、広沢くんが私の頭を撫でる。
その手のひらの熱にドクンと胸を鳴らしたとき、広沢くんがふっと笑って私の耳元に顔を寄せた。
「年下だからって油断して、桐谷にあんまり優しくしちゃダメですよ?」
息を吐くようにささやいて謎の忠告を残すと、広沢くんはミーティングブースから出て行った。