その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―





広沢くんと一緒に取引先への同行をした新城さんは、その2時間後にとてもご機嫌に戻ってきた。

デスクに荷物を置いたあとは、広沢くんのデスクのそばについて、何か一生懸命話している。

広沢くんに同行して、気分転換になったのかな。

そう思って見ていると、桐谷くんが私のデスクの前にやってきた。


「確氷さん、何かお手伝いすることありますか?」

「広沢くん戻ってきたけど。何か指示受けてない?」

訊ねて首を傾げると、桐谷くんが微妙そうな顔で広沢くんのほうをチラリと見た。


「広沢さんの指示を受けようと思って待ってたんですけど……新城さんがいろいろ喋ってて、なかなか終わらなくて」

桐谷くんにつられるように視線を動かすと、新城さんが何処かから持ってきた椅子を広沢くんの隣に置いて、何か話しながらにこにこと笑っていた。

その様子があまり良い感じには見えなくて、そっと桐谷くんに視線を戻す。


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