その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
◇
広沢くんと一緒に取引先への同行をした新城さんは、その2時間後にとてもご機嫌に戻ってきた。
デスクに荷物を置いたあとは、広沢くんのデスクのそばについて、何か一生懸命話している。
広沢くんに同行して、気分転換になったのかな。
そう思って見ていると、桐谷くんが私のデスクの前にやってきた。
「確氷さん、何かお手伝いすることありますか?」
「広沢くん戻ってきたけど。何か指示受けてない?」
訊ねて首を傾げると、桐谷くんが微妙そうな顔で広沢くんのほうをチラリと見た。
「広沢さんの指示を受けようと思って待ってたんですけど……新城さんがいろいろ喋ってて、なかなか終わらなくて」
桐谷くんにつられるように視線を動かすと、新城さんが何処かから持ってきた椅子を広沢くんの隣に置いて、何か話しながらにこにこと笑っていた。
その様子があまり良い感じには見えなくて、そっと桐谷くんに視線を戻す。