その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―



「業務に関する質問をしてるってわけじゃなさそうね?」

苦笑いする私に、桐谷くんは何も答えなかった。

広沢くんも注意すればいいのに、新城さんに合わせてときどき楽しげに笑っている。


新人の可愛い子と一緒に営業に出て、ちょっと浮かれてる?

そう思ったら一瞬もやっとしたけれど、すぐに考えるのをやめにした。


「じゃぁ、桐谷くんには他のことを頼むわね」

広沢くんから視線を外すと、パソコンを操作して彼にふれそうな仕事を検討する。

ぽちぽちと指でマウスを押しながらパソコンの画面を見ていると、ちょうど頼めそうな仕事が見つかった。


「じゃぁ、このデータ入力を頼もうかな。ちょっとこっちに回って来てもらっていい?」

「あ、はい」

桐谷くんに私のパソコン画面が見える位置に回ってきてもらうと、それを見せながらやり方を説明する。


「頼んで大丈夫そう?」

ひととおり説明を終えて隣を見ると、思ったより近くで一生懸命メモを取りながら話を聞いてくれていた桐谷くんが、にこりと微笑んだ。



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