その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
ソファーの上で曲げている膝は窮屈そうなのに、僅かに口を開いて寝息をたてている顔は気持ちよさそうだ。
その寝顔を見ていたら、秦野さんのことで少し落ち込んでいた気持ちが晴れるような気がする。
「風邪ひくわよ」
ソファーの前にしゃがんでしばらく広沢くんの寝顔を眺めたあと、くしゃりと髪を撫でる。
それから立ち上がると、ソファーの前に落ちている彼のスーツを拾って、寝室のハンガーにかけにいった。
ついでに、クローゼットの中からブランケットを出して、リビングに戻る。
ソファーで眠っている広沢くんにそれをそっとかけてやったとき、不意に手首をつかまれた。
「おかえりなさい、れーこさん」
寝起きの声でそう言った彼が、私を見上げて嬉しそうに笑うから胸の奥がきゅんとした。
「起こした?」
「うとうとしてただけだから。れーこさんが頭撫でてくれたあたりで目覚めてました」
「それなら、もっと早く声かけてよ」
「だって、なんかれーこさんが優しくしてくれるから」
カーッと頬を熱くする私の下で、広沢くんがニヤリとする。