その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「ふざけないで」
「照れなくていいのに」
「照れてない」
つかまれた手を振り払って離れると、広沢くんがニヤついたまま身体を起こす。
「そんなことより、ご飯は食べた?私は簡単にパスタでも茹でて済ませようと思ってたんだけど。広沢くんも食べる?」
「食べます」
「じゃぁ、ちょっと待っててね」
そう言ってキッチンに向かうとすると、広沢くんが急に私の手をつかんで引っ張った。
それで、私の身体がソファーに座る彼の足の間に落ちる。
「何?」
びっくりして立ち上がろうとすると、広沢くんが私の背中に腕を回して抱き寄せた。
「ごはん、できないんだけど……」
控えめに抵抗してみたけど、広沢くんには聞こえていないのか無視しているのか、私を閉じ込めた腕を少しも緩めてくれない。
むしろ、より強く私を抱き寄せて、首筋に顔を埋めてきた。
「れーこさん、なんか元気ない?」
甘えるみたいに顔を擦り寄せてきた広沢くんが、心配そうに私の耳にささやく。