その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―



どうしてわかってしまうんだろう。

広沢くんの観察眼には、本当に驚く。


「どうしてそう思うの?」

「んー?俺、れーこさんのことなら何でもわかるから」

クスリと笑いながら、耳に寄せられる広沢くんの唇が擽ったい。


「何があったんですか?」

何かあった前提の、彼の質問に苦笑いする。

隠すのは難しそうだし、もしかして広沢くんの協力が得られたら少し良い方向に転がっていくかもしれない。

そう思ったから、今日の帰り際の秦野さんとの会話の内容。それから、私が余計な気を回したことで彼女を傷付けたことを広沢くんに話した。


「あー、それで。なんか最近、やたらと新城さんに懐かれてるし。秦野は何やってんだろう、って思ってたんですよね」

話を聞いた広沢くんが、未だ抱き寄せたままの私の耳元でぼやく。


「秦野か新城さんか、どっちかが歩み寄らない限りこのまま拗れ続けますよ。あのふたり。良い意味でも悪い意味でも似てますから」

冷静な広沢くんの分析に、確かにそのとおりだと思った。


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