その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―



秦野さんと新城さん。おそらくふたりは、性格とか考え方のタイプが似てる。

さらには、ふたりとも広沢くんのことを気に入っていて、男の人の好みまで似ているみたいだし。


「広沢くんに、ひとつお願いがあるんだけど」

「何ですか?」

目の前の広沢くんをジッと見ると、彼が不思議そうに首を傾げた。


「同期として、近いうちに秦野さんと話してみてくれないかな」

「ミーティングルームにわざわざ呼び出してですか?」

「うーん。それだと仰々しいし、仕事帰りに飲みに誘うとかどう?広沢くんの励ましやアドバイスだったら、秦野さんも受け入れやすいと思うの」

自分としてはいい考えだと思ったのだけど、私の提案に広沢くんが顔を顰めた。


「だめ?」

「ダメではないですけど……」

広沢くんが乗り気ではなさそうな声でそう言って、私を抱きしめていた腕をほどく。

言葉を濁すところをみると、どうやらあまりいい案ではなかったらしい。


< 44 / 218 >

この作品をシェア

pagetop