その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
残念に思いながら肩を落とすと、広沢くんが不貞腐れた顔をした。
「だから、ダメではないですよ。前もこういうの聞いた気がするけど、俺が秦野とふたりで食事に行っても、れーこさんは平気なんですか?」
不満そうに、ジトーッとした目で見つめてくる彼の姿に、提案そのものがダメだったわけではないと気が付く。
なんだ、心情の問題なのね。
そう思ったら、広沢くんのことをギュッと抱きしめてグシャグシャと頭を撫でたくなると同時に、彼に対して少し意地悪したい気持ちになった。
「別に、私は広沢くんが誰とふたりきりで食事をしようとなんとも思わないけど」
わざと抑揚のない声でそう答えると、広沢くんが複雑そうな顔で私を睨む。
「あー、そーですよね。れーこさんは」
「ふたりで食事に行ったからって、広沢くんは秦野さんとどうこうなったりしないでしょ?」
不貞腐れて自棄になる広沢くんに、にこりと笑って訊ねてみると、彼がピクリと頬を痙攣らせた。