その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「あー、なるほど。俺が他の女と浮気するわけないっていう信頼の基に『お願い』してきたってことですか。たいした自信ですね、れーこさん」
笑顔の私に、広沢くんが意地悪な黒い笑みを返してくる。
私のほうが少し意地悪するつもりだったのに、なんだか雲行きが怪しくなってきた。
何か企んでいるような瞳に後ずさろうとすると、広沢くんが私の腰をつかむ。
「ちょっとだけ気分よくなったから、れーこさんの『お願い』聞いてあげてもいいですよ?秦野のこと飲みにでも誘って、新人教育の方向性の打ち合わせたらいいんでしょ?実際のところ、俺も、あんまりあの子に纏わりつかれたら仕事にならないし」
「そうしてもらえたら助かる。じゃぁ、私はパスタでも……」
キュッと口端を引き上げた広沢くんから逃れようとしたけれど、既に私の腰をがっちりとロックオンしていた彼の手にふたたび抱き寄せられた。
「れーこさん?」
語尾上がりに私を呼ぶ、とてつもなく甘い広沢くんの声に、ゾクリとする。