その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
II
「みんな、手元にグラスきたかー?」
生ビールのジャッキをつかんだ企画部長が、立ち上がってテーブルを見回す。
集まった全員の手に何かしら飲み物があることを確認すると、企画部長の乾杯の音頭で飲み会が始まった。
新入社員の桐谷くんと新城さんが配属されてきて、そろそろ1ヶ月。
それに合わせて、今日は企画部で新歓の飲み会が開かれていた。
「お疲れさま」
「お疲れさまです」
企画部長の掛け声のあと、私はなんとなくそばに座ることになった秋元くん、秦野さん、桐谷くんと一緒にビールのグラスをカンッと合わせた。
「桐谷くんとはデスクが遠いから、あんまり話すことないよね。どう?だいぶ慣れてきた?」
テーブルを挟んで私の斜め前に座っている秋元くんが、私の隣の桐谷くんに話しかける。
「あ、はい。広沢さんも、わかりやすくいろいろ教えてくれるので」
先輩に話しかけられた桐谷くんは、飲みかけていたビールのグラスを律儀にテーブルに置いて、ピンッと姿勢を正した。