その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「秋元くん、秦野さんはちゃんと新城さんの教育担当として頑張ってくれてるから……」
秦野さんが溢していた弱音を直接聞いてしまった手前、彼女の気持ちを考えるといたたまれない。
桐谷くんのいるこの場で、後輩の秋元くんがそれを言ってしまうと、秦野さんの立場だってなくなってしまう。
フォローの言葉をかけながらそっと秦野さんを見ると、案の定、彼女は静かに俯いていた。
これは、泣いているかも……
もう幾度と見ている、涙目の秦野さんの顔を思い浮かべて、どうフォローすべきか途方にくれる。
だけど、秋元くんは秦野さんに対してフォローも謝罪もするつもりはないようだった。
「だって、事実じゃないですか。現に今だって、新城さんは広沢さんの隣にべったりだし」
グラスに入ったビールを一気に半分くらい飲み干すと、一番離れたテーブルに座る新城さんのほうを意味ありげにチラッと見遣る。
それにつられるように私も視線を動かしたら、ちょうど新城さんが隣に座る広沢くんの腕に笑顔でボディタッチしようとしているところだった。