その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
なんとなく視線を外さずに見ていたら、新城さんに触れられるギリギリのところで広沢くんがさりげなく腕を避ける。
そのことにどこかでほっとしたものの、ずっと広沢くんに擦り寄るように座っている新城さんと彼との距離は、不自然なくらいに近かった。
意図的にそうしているのだろうけれど、新城さんの広沢くんへの態度はわかりやすい。
特にここ1週間の新城さんの広沢くんへのアピールはあからさまで。広沢くん本人を含めた同僚たちのほとんどが、彼女の彼への好意に気が付いていた。
「けど、若いってすごいですよねー」
自分だってどちらかと言うと新城さん寄りの年齢なくせに、秋元くんがビールのグラスを持ち上げながらそう皮肉る。
「いいんですか、秦野さん。ほっといたら、教育担当の立場だけじゃなくて、彼女の座も奪われちゃいますよ」
秋元くんが不機嫌そうな声でそう言って、グラスの残りのビールを煽る。
彼が空けたグラスをトンっとテーブルに置くと、秦野さんが視線だけ上げてそれを睨んだ。