その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
無言で考え込んでいると、桐谷くんが口元に手をあてて小さな笑い声をたてる。
「大丈夫です。誰にも言わないんで」
「そうしてもらえたら助かるけど。そんなことより、どうして私と広沢くんの関係に気付いたの?」
飲み会のテーブルが近すぎたせいでバレたのなら、今後会社で業務連絡時以外に広沢くんに近付かないように気を付けなければいけない。
それに、広沢くんのほうにも気を付けてもらわないと。
いろいろと思考を巡らせながら顔を顰めていると、桐谷くんが笑いながら悪戯っぽくその瞳を揺らした。
「どうして、って。広沢さん、普段はすごく冷静なのに、碓氷さんが関わった途端にいろいろと余裕なくなっちゃうから」
「え?」
「さっき広沢さんが俺たちのテーブルにほうに移動してきたのだって、碓氷さんが俺とか秋元さんとか男に囲まれてたからでしょ?」
「まさか。秦野さんの近くにいたら、変に拡まった噂のせいで揶揄われるからでしょ」
「それもあるかもですけど。それよりも、碓氷さんのことが気になってたんだと思いますよ」