その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―


そういえば、そのことをふたりにきちんと打ち合わせしていなかったな。

メール処理を終わらせてから立ち上がると、私は広沢くんに声をかけて、一緒に秦野さんのデスクのそばへと移動した。


「秦野さん、ちょっといい?」

声をかけると、秦野さんが仕事の手を止めて慌てて立ち上がる。


「あ、そのままで大丈夫。すぐ終わるから。広沢くんもここに座って」

秦野さんの左隣の、新入社員用に用意されたデスクから椅子を引き出して広沢くんに勧める。

そこに彼を座らせると、新入社員の指導内容についての資料を一枚手渡した。

そこに書かれた大まかな業務内容をざっと説明してから、秦野さんの隣の空きデスクのパソコンの上に用意された、新入社員用の研修ファイルをひとつ取り上げる。


「いちおう、最初の1ヶ月は研修記録としてここに日報を書いてもらうことになってるから。どちらか手が空いている方がその日のうちにチェックして、私のところに持ってきてくれる?」


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