その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
もしも、広沢くんの気持ちが私から離れることになったときは……ときどきだけど、そんなことも考える。
心の隅にそんな想いを抱えていることが知られたら、広沢くんにものすごく怒られそうだけど。
「じゃぁ、お疲れさま」
「お疲れ様です」
ドアが閉まるベルが鳴るのが聞こえて、今度こそ桐谷くんに別れの挨拶をする。
電車を降りて振り返ると、閉じたドアの向こうで桐谷くんが会釈するのが見えた。