その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
Ⅲ
「碓氷さん、おはようございます」
「あ、おはよう」
新入社員の歓迎飲み会の数日後。
勤務開始前にコーヒーを淹れたくて給湯室に行くと、同じ目的でそこにやってきた桐谷くんに声をかけられた。
「桐谷くんもコーヒー?」
「あ、はい。皆さんの真似して、マイカップを持ってきてみました」
桐谷くんが手にしていたマグカップを胸の前まで持ち上げて笑う。
「デスクにコーヒー置いて仕事してると、なんか仕事できるようになった感じしますよね」
「そう?」
桐谷くんの発言が可愛くてつい笑ってしまう。
「碓氷さん、桐谷くんおはようございます」
桐谷くんと話しながらドリップコーヒーを淹れていると、菅野さんが給湯室に入ってきた。
「あ、おはよう」
「おはようございます」
挨拶を返すと、菅野さんも自分のマグカップを取り出してコーヒーを淹れる準備を始める。
私の隣に立った彼女は、マグカップにドリップコーヒーのフィルターをセットするとおもむろに口を開いた。