復讐の華
「私は…」
息が詰まる。伊織の黒い瞳が私の奥を突き刺すようで、背筋から冷たい畏れがせり上がってくる。
「ちゃんと伊織と一緒に病院に行くから、安心して」
作った笑顔が自然に見えているか自信は無かった。
だけど彼は安堵したように頷いたから、違和感は無かったのだろう。
私のことを信じて、とは言えなかった。
今、彼につけ込む最大のチャンスなのは間違いないのに。
私が飛鳥を失うよりずっと前に傷付いて、3年が経ったこの今も、横断歩道に向かって後悔を滲ませていた伊織に。
最も酷い裏切りをすると分かっている私が、信じて欲しいなど言える筈が無かった。
分かっている。これは私の弱さだ。中途半端な、エゴ。