復讐の華

幹部室の扉を開けると、いつもの場所に來が圧倒的な存在感で座っていた。


だけどその右にも左にもいつもの彼らの姿はない。


「ああ、そうみたいだな。瞬はさっきまでいたけど美穂とデートしてくるって出て行った」


美穂、私にはそんなこと一言も言ってなかったのに。


いつまでも突っ立っている訳にもいかず、とりあえず來の向かいのソファーに座る。


思えばこんな状況で來と2人きりは初めてかも。


來は何やら本を読んでいた。チラッとその表紙を盗み見る。


「あ、それ。私も今日借りてきた」


偶然にも來が読んでいたのは、私が今日図書室で借りてきたものと同じ作家の本だった。


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