復讐の華
◇◇
土曜日。
私は伊織と一緒に病院に来ていた。
隠し切れない緊張を顔に滲ませて、彼女の病室の前に突っ立って何分経っただろうか。
「伊織、」
彼の目をしっかりと見て、頷く。大丈夫だよと、勇気を分けてあげられるように。
彼の手が恐る恐るスライド式のドアの取っ手に触れた。
とてつもなく重いドアなのではと思ってしまうくらいゆっくりと横に引く。
漸く人1人入れるくらいに開いて、向こうからの光が届く。
怖気付いたようにその動きが一瞬止まった。
それでも、一つ息を吐いた伊織は病室に1歩足を踏み入れた。
私の横から伊織の姿が消えてゆく。