復讐の華

來を睨む晟也の目に、怖い何かを感じて背筋がゾワッとする。


試合開始のゴングが鳴った。


晟也が一気に距離を詰める。


私は無意識のうちに息を止めていた。2階からでも分かるほど、彼らの戦いは本気が感じられる。


息遣いが緊迫を伝えて、目を逸らせない。実力は互角に見えた。


一方が拳を入れると、もう一方が蹴りを返す。


誰もが固唾を飲んで見守っていた。他のどの試合よりも圧倒的に凄まじい戦いだった。


その均衡が崩れたのは、來の蹴りが晟也の横腹にヒットしたところからだった。


晟也が段々と來の速さについていけなくなる。


決着がつくのは時間の問題だった。


そして派手に音を立てて、晟也が床に倒れた。大の字に仰向けになって、荒く息を吐く。

< 181 / 312 >

この作品をシェア

pagetop