復讐の華
「何なの?」
「いや、何でもない」
もう話す気がないように、來は携帯を取り出した。
仕方なく私もソファーに背をもたれて頭の中でさっきの会話を再生する。
…ああ、そういうことか。
訪れた沈黙に、鈍っていた勘が冴えたように私にもその意味が分かってしまった。
飛鳥だ。彼らが口を噤むのは、飛鳥が関係している以外に有り得ない。
気付いてしまったそれに、危なく笑ってしまうところだった。
彼らの中で飛鳥はまだまだタブーな存在らしい。
指に刺さった棘が途中で折れて皮膚に残ったかのように、心の中のしこりが完全に消えてはいなかったんだ。