復讐の華

そうだ。当時、飛鳥が裏切ったと思った彼は酷く荒れたんじゃなかった?


『彼には忘れられない人がいるのよ』


あの女もそう言っていた。深く気に留めなかったけど、まさかそれは飛鳥のこと?


彼は黙って私を見ていた。気付かれているのかいないのか、探っているのだろうか。


一点を見つめている私に気付いた來が同じ方向を向く。



「…もしかして、晟也なの?飛鳥の相手」


放たれた私の言葉に、晟也が目を見開く。


それは肯定しているも同然だった。


隣の來はまだ現実を呑み込めていないかのように立ち竦んでいた。


重苦しい沈黙。誰も言葉を発しなかった。いや、発せなかった。


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