復讐の華

「來っ…!」


感情の昂りに赴くまま、彼に縋り付く私を、來もまた抱き締め返してくれる。


もうこの温もりだけでいい。私の手の中にあるのは、この幸せだけで十分だ。


そう思ってしまうくらいに、私は彼に惹かれていた。


ようやく体を離して、見えた來の顔は安心したように微笑んでいた。



「飛鳥のこと、ごめん。でも俺は、華月のことを離せない。もう一度、水憐に戻って来てくれないか?」


真剣な顔をして、私を見つめる。


もう無理だった。自分の気持ちに抗うのも、2度も彼らから離れるのも、私には出来そうになかった。


私の傍らに立つ紘斗をチラリと見る。


その視線に気付いた紘斗は優しく笑って、頷いてみせた。


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