君は冬に華を咲かす
「ハナ」
私が待合室のソファで寝てる時、お父さんが話しかけてきた。とても優しい声音で。
「ん…お父さん…?」
「…よくお聞き」
「うん」
嫌な予感はした。お母さんとお兄ちゃんの様子を見れば1発だ。
「これから、ハナはとても辛い生活を送ることになるだろう。」
「うん」
「でもね、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも絶対ハナの味方だから。ハナが辛い時は頼りなさい。」
「うん」
お父さんは涙を大量に流しながら抱きしめてくれた。

(あぁ…私は死ぬのか…)

「お父さん…私…なんの病気…?」
「ハナはな…日に日に体力が落ちていく病気なんだ…日本でも例が少なくてな…何も出来ない…ただ分かっているのが残された命は1年ということだ。」
「1年も生きていいの?」
「あぁ…その1年、ハナが好きなことをしなさい。ただ、秋にはまた入院しなければならない…秋にはもう…寝たきりになるらしい…」
「じゃあ夏は遊んでもいいのね!リンちゃんと過ごしてもいいのよね?!」
「もちろんだとも」
「秋には入院してもう、最後が近いときには俺たちの元で過ごしてもらう。最後位は俺たちにハナの時間をくれ」
お兄ちゃんが涙を流しながら言った。
「ハナ…ずっとそばにいるからね…」
お母さんが抱きしめてくれた。
「暖かいよ…お母さん…お母さぁぁん」
私は待合室で散々泣き叫んだ。待合室には私たちしかいなかった。


これが悲劇の始まり。春はまだ始まったばかりと思っていたが案外あっという間に終わった。

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