普結くんは、桃にイジワル。
「ねー、ちょっとは鈴木に優しくしてあげれば?
普結くんのことあんなに好きなんだよ。かわいそうじゃん」
「へえ、八宏さんて自分のこと好きになってくれる人には無条件に優しくて無条件に仲良くなれる人なんだ?
おめでたくて平和な頭の造りしてるんだねー」
そう言いながらまた文庫本に目を走らせる。
俯いた拍子に彼の艶やかな髪の毛が一房、頬に落ちた。
「…そうじゃなくて!
さすがに鈴木がかわいそうじゃないって言って「へえー八宏さんはかわいそうだから優しくしてあげるタイプの人なんだ?すごくいい人だねえ」
ぺらぺらと滑舌よく喋る普結くんに遮られ、あたしの主張はかき消された。
ページをめくる手をふと止めて、
おもむろにあたしを見つめた普結くんは形のいい口をにっこりと吊り上げた。
「そういうの、ギゼンシャっていうんだよね。
まさに八宏さんのことを体現した言葉だね!」
「……………」
「…………………」
「……なんか言ってよ、リエちゃん」
「…ドンマイ」
隣の席の普結くんは、
あたしのことがあまり好きではないらしい。