普結くんは、桃にイジワル。



「さっきのさあ、授業受けなくて良いって言ってたのも
柚山と勝手に気まずくなってるからだったりして」

「なななんでそれを…」

「だってあの日あんたらが教室出て行ったあと慌てて教室飛び出して行ったんだもん、柚山」

「……そうだったんだー…」

「追いかけて行ったんだろうな、って一目瞭然。
笠原さん必死に引き止めてたし」


そうなんだ。

引き止められたのを振り切って、
走ってあたしたちのこと探してくれたのか。


また少しだけ心が浮ついてしまって、慌てて気持ちをしずめる。


「柚山はなんて言ってたの?」

「……なにも言ってなかった」


そう。

あの日普結くんはなにも言わなかった。


鳴海くんに抱きしめられたままのあたしを黙ってみてた。


「あんな剣幕で追いかけ行ったのに何も言わずに突っ立ってたわけ、柚山は」

「そんな言い方は…」


尻すぼみになっていく普結くんを庇う言葉は最後まで言えなかった。

どこかであたしも思ってたからだ。

″なんで追いかけてきたのになにも言ってくれなかったの?″
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