普結くんは、桃にイジワル。
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「先輩、ちょっといいですか?」
赤い髪と整った顔が目立つ後輩は、
今日は学ランを着込んでいてさらに目立っていた。
周囲の視線がちらちらと彼に向けられているのがわかる。
不意に話しかけられた昼休憩終了5分前。
昼一番に応援合戦が控えていた。
「…なに」
「もう逃げませんよね?色んなことから」
真っ直ぐな言葉が容赦なく俺を貫く。
今まで逃げてきたことが、襲いかかってくる。
…だけど。
「もう逃げない」
逃げないために、ちゃんとしようと思った。
自信がつくためにはどうしたらいいか、自分なりに考えた。
だからもう逃げない。
俺を真っ直ぐに見つめるその目からも、
戸惑いながらも俺をすがるように見るあの目からも。
決意の意味も込めて、後輩の目を見つめて言った。
「約束する」
遠くで午後の部を知らせるアナウンスが聞こえた。