普結くんは、桃にイジワル。
脂汗をかく山根くんをなんとか救護室まで運んで、
急いでクラス席へと戻る。
鈴木と喋っていたリエちゃんのところへ駆け寄って必死の形相で訴えた。
「やばい!リエちゃんやばい!!」
「やばいのはアンタの顔よ…
どうしたのよ、リレーは?」
「アンカーがいなくなっちゃった!!!」
「はぁ?!!」
あたしの言葉に周囲のクラスメイトたちがざわつく。
まさかあたし、
1人で2人分走らなきゃいけないの?
サーっと音を立てて血の気が引いていく。
涙目になったその時、
「俺が走る」
「…普結くん」
振り向いた先にいたのは、
ポケットに手を突っ込んだままの普結くんの姿。
「柚山って走れんの…?」
「たしか体育の時間とかほぼ走ってるとこ見たことないよーな気がする」
「測定も受けてねえから50メートル走何秒なのかもわかんねえよな…」
口々に不安を口にするクラスメイトたちは、
不安げに普結くんを見つめる。
普結くんはそんな視線を物ともせず、じっとあたしを見つめて口を開いた。
「走る。
ちゃんと八宏さんからバトン受け取る。」
今まで聞いたことないくらい
決意のこもった声だった。