普結くんは、桃にイジワル。
対抗リレーは体育祭の目玉の一つだ。
否応無しに上がっていくボルテージと
プレッシャーを感じながら入場門へと急いだ。
「ね、普結くん」
少し前を歩いていた背中へ声をかける。
振り向いた普結くんの顔は緊張なんてものは微塵も感じないいつもの顔。
「大丈夫?急に決まっちゃったけど…緊張してない?」
「緊張なんてしてないよ、たかがリレーで」
軽く言い放った普結くんの顔は飄々としていて、虚勢を張っているわけではないらしい。
「むしろ別のことで緊張してる。
だからリレーではちゃんと役目を果たすから安心して」
「別のことって…」
あたしの言葉は見事に会場アナウンスにかき消され、
入場門へと向かう人の波へ流されてしまう。
普結くんと別れる直前、
突然あたしの手を握って普結くんは言った。
「これが終わったら、 」
「…え、待っ」
途中で消えた言葉を聞き返す事もできないまま。
ついに対抗リレーは始まった。