普結くんは、桃にイジワル。
「うーわあの人速っ…顔やべーけど」
「すげー、どんどん距離縮まってる…顔やべーけど」
周囲からちらほらと聞こえる声が地味に聞こえるのがつらい。
あたし今どんな顔して走ってるんだろう。
でも今は、
普結くんにバトンを渡すことだけ考える。
ひたすら足を動かして走って、走って、
やっと普結くんの姿が見えてきた。
敵の背中まであと数メートル、
渾身の力でバトンを押し出した。
「よっしゃ、よくやった!」
一瞬だけ見えた普結くんは
少しだけ口の端を上げて笑っていた。
いつだったか、見たことがある顔だった。
そしてその時も思ったんだ。
″ああ、この顔好きだな″って。