普結くんは、桃にイジワル。
歓声を浴びながらゴールテープを切った普結くんは、
あたしに気づいた様子でまっすぐに此方へ歩いてくる。
「ふゆくんっ…普結くん!!
やったねーっ!」
鉢巻きを乱暴に取った普結くんに
感動のあまりハイタッチしようと両手を広げた。
その瞬間、
伸ばされた両腕が
思い切りあたしの身体を抱きしめた。
「普結くん…?」
息を切らして返事をするその声が、
耳もとでダイレクトに伝わる。
汗ばんだ肌から普結くんの匂いがした。
「え…なに、夢…?」
「夢じゃないから」
掠れた声に否定されて、
やけに速い鼓動が伝わってきて。
これは現実なんだと理解した。
「好きだ」
抱きしめられたまま、もらった言葉。
ずっとずっとあたしが欲しくてたまらなかった言葉だった。