普結くんは、桃にイジワル。
「うそ…え、なにドッキリ?」
「ドッキリじゃないしうそじゃない。
ずっと好きだった」
少しだけ身体を離して正面からその顔を見る。
頬を真っ赤に染めてきまりが悪そうに大きな目を逸らしたまま、
「好きだよ、八宏さん」
もう一度そう言ってくれた。
「…泣かないでよ」
困ったような嬉しそうな
そんな不思議な顔をしながら、
普結くんはぎこちなくあたしの顔をなぞった。
彼の細い指が濡れているのを見て、初めて自分が泣いていたことに気がついた。
「あたしも好き…普結くんのこと好き…っ」
「うん」
知ってる。
そう言ってはにかんだように笑った顔を見て、
何故だかまたぶわりと涙がにじんだ。
「あのー、君たちね…
取り込み中悪いけどさ、ここでやらないでもらえるか…
先生もどうしていいかわかんないから」
「……あ、すいません」
遠慮がちに声をかけてきた先生の声でふと気づくと、
視線の嵐。
きゃあきゃあと盛り上がる生徒たちから逃げるようにして、
普結くんは走り出した。
もちろん、あたしの手を握ったまま。