普結くんは、桃にイジワル。
「八宏さんはどうしたいの?」
「………」
ぎりぎりと歯軋りしてみてもなにも変わらないのに。
素直になれない可愛くない自分にイライラしてしまう。
″付き合ってください″
ただその言葉だけでいいのに。
その言葉ひとつで、この曖昧な関係から脱出できるんだから
安いもんじゃないか。
決意を固めて顔を上げた瞬間、
顎に手をかけて目にも止まらぬ速さで唇を押し付けられた。
あまりのことに、あたしは目をかっ開いたまま。
「……こう言う時って目閉じるもんじゃない?普通」
「ああ…」
「今更目閉じても遅いし。
それともなに、もう一回?」
意地の悪さを隠しもしない声音にムキになって否定しそうになるけど、
今日だけは。
少しだけ自分に素直になろう。
「…ふーん、今日はやけに素直だね」
笑いを含んだ声、
今度は頭の後ろに回った手。
目を閉じたまま、ただ分かったのは普結くんの匂いだった。