普結くんは、桃にイジワル。
足を前に出した瞬間、
ふわりと耳もとに寄せられた普結くんの顔。
コソコソ話をするようにあたしの耳に手を当てて言った。
「さっきの続きもうちょっとしたかったけど
今は我慢かな?」
続き…?
続きって、
なんの…
そこまで考えたところでフラッシュバックする、伏せられたまぶた。
顎にかけられた指。
フリーズしたあたしを置いて、スタスタと先を歩いて行く。
その背中をただただ見つめることしかできなかった。
「…普結くんっ!」
悔し紛れに呼んだ声におもむろに停止した普結くんは、
ゆっくりと此方を振り向いて、
いつものように意地悪な顔で笑った。
普結くんは、桃にイジワル。【完】