普結くんは、桃にイジワル。
「普結くん、ついてきてくれるの?
次の授業遅れちゃうよ?」
「俺レベルになると授業なんて少々遅れても痛くも痒くもないの。
いいから黙って歩いて」
そう返されては何も言えない。
悔しいことに彼の成績はかなり良い方らしい。
まあいつもあれだけ齧り付くように本読んでるくらいだから、
勉強だって苦じゃないんだろう。
少し前を歩く彼の襟足を見ながらそんなことを考える。
…いつもこうだったらいいのに。
嫌味ばかり吐く口を閉じると、
普結くんはびっくりするくらい普通の男の子だった。
「あれ?
先生いない」
ガラリと保健室のドアを開けた普結くんは小さく呟いた。
薬品の匂いが微かに香る保健室はあまり縁が無いからか、少し居心地が悪い。
「ありがとうね普結くん
わざわざついてきてくれて」
「…べつに。
俺保健委員だから一応」
そう言えばそうだった。
一応保健委員なんてものがあったんだった。