普結くんは、桃にイジワル。
「…せんぱい、
もう夕方っすよ先輩」
「………今何時?」
「17時っす」
とろとろと身体を起こすと、窓の外はもう日が傾いていた。
思っていたよりも長い時間眠ってしまったらしい。
「あれ、先生は?」
「ついさっきちょっと職員室いくって出て行きましたよ。
俺らにもさっさと帰りなさい、って」
いつ取りに行ったのか、鳴海くんはちゃっかり自分の鞄を手していた。
帰る準備万端の鳴海くんに連れられて、保健室を出る。
「じゃあ鳴海くん、お大事にね。
気を付けて帰ってね!」
「…え?」
「え?」
「いやなんでこの流れで俺一人で帰るんすか。
一緒に帰りましょうよせっかくだし」
「あー、でもあたし鞄持ってないし…」
「取りに行ったら良いじゃないっすか」
「…ごもっともですね」
いつのまにかみんな帰ってしまったらしく、廊下には人の気配は無い。
やたらと静かな廊下に、
二人ぶんの足音がやけに大きく響いて聞こえた。