普結くんは、桃にイジワル。
「…あー、
八宏さんさ、悪いけど保健室行って資料もらってきてくんない?」
「え、普結くん行かないの?」
「代わりに行ってきてよ。
もうどうせ委員会は終わってるだろうし、今から行きづらいし」
「…わかったあ」
使いっ走りにされるのは何となくシャクだったけど、
さっきの衝撃が強すぎたのか。
文句も言えず、半ば呆然としたまま教室を飛び出した。
「どーしたんだよ普結、なんか変だぞ?」
「うるせえ触るなハゲ」
「ハゲてねえし!
…お前どうしたその顔、なんか機嫌悪い?」
「機嫌悪いっていうか…
拗ねてる?」
「眉間にシワ寄ってるけど顔を真っ赤なんだけど…
なんなの、怒ってんの?どう言う顔なのそれ」
「…うるせえ
どいつもこいつも排水口に流されろ」
あたしがいなくなった教室で、
こんな会話が繰り広げられていたことも知らず。
陽が傾き始めたオレンジの廊下を足早に進んだ。