普結くんは、桃にイジワル。
「んじゃ、教室戻るね。
これ普結くんに渡しとくから!」
「え、もう戻るんすか?」
「普結くん教室で待ってると思うから。
鳴海くんも早く帰りなよ?」
そう言って鳴海くんに笑いかけて、
教室へ戻ろうと足を踏み出した。
「あ、の!」
「わ、びっくりした…
どうしたの?」
不意に掴まれた右手に引っ張られて少し態勢を崩した。
振り向いた鳴海くんの顔はなぜか驚いたような顔で固まっている。
…びっくりしたのはあたしなんだけど。
「…………」
「…あのー、鳴海くん?
どうしたの?」
「…あ、
えーっと…
なんだっけ、忘れました」
「何それ」
引き止めておきながら曖昧に笑った鳴海くんは、ゆっくりと手を離した。
「じゃあ今度こそ、
戻るね。バイバイ」
言いながら鳴海くんに背中を向けて、今度こそ教室へと足を進めた。