普結くんは、桃にイジワル。



「んじゃ、教室戻るね。
これ普結くんに渡しとくから!」

「え、もう戻るんすか?」

「普結くん教室で待ってると思うから。
鳴海くんも早く帰りなよ?」


そう言って鳴海くんに笑いかけて、
教室へ戻ろうと足を踏み出した。



「あ、の!」

「わ、びっくりした…
どうしたの?」


不意に掴まれた右手に引っ張られて少し態勢を崩した。

振り向いた鳴海くんの顔はなぜか驚いたような顔で固まっている。

…びっくりしたのはあたしなんだけど。


「…………」

「…あのー、鳴海くん?
どうしたの?」

「…あ、
えーっと…

なんだっけ、忘れました」

「何それ」


引き止めておきながら曖昧に笑った鳴海くんは、ゆっくりと手を離した。


「じゃあ今度こそ、
戻るね。バイバイ」


言いながら鳴海くんに背中を向けて、今度こそ教室へと足を進めた。


< 40 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop